住宅を新築で購入するのではなく、中古物件を買ってリノベーションする人が増えています。中古住宅のリノベーションには、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?また、中古戸建てと中古マンションで、どのように違うのかも気になるところです。中古住宅のリノベーションについて調査してみましたので、中古物件購入を検討している方は参考にしてください。
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リノベーションとは
キッチンや風呂場などの設備を交換したり、外壁を塗り替える程度の小規模な工事をしたりすることをリフォームと呼びます。これに対して、リノベーションは間取りの変更や水道管、排水管の変更などの規模の大きな工事を指します。リノベーションすると建物の機能が大幅に改善されるので、快適な居住空間を実現できます。
リノベーションのメリット
リノベーションには、以下のようなメリットがあります。
自由に設計できる
家をリノベーションすると、自分の好みに合わせて住宅を設計できます。既存のマンションや建売住宅は、似たようなデザインになることが多いため、内装に強いこだわりがある方にはリノベーションが最適です。
間仕切りのない広々としたリビングやシステムキッチンの設置など、自分のライフスタイルに合わせて家をカスタマイズできます。
物件選びの選択肢が広がる
希望するエリアで理想の新築戸建やマンションを見つけるのは非常に困難です。とくに都市部では、多くの人が希望どおりの新築物件を見つけられず、仕方なく条件を変更して物件を探しています。
ところが、中古物件なら新築を選ぶのとは違って、静かな住宅地や河辺で暮らしたいなど、細かい条件も満たせる戸建てやマンションが見つかる可能性があります。
また、間取りや内装、設備機器が条件を多少満たしていなくても、エリアや立地が条件を満たせればよいので、対象となる戸建てやマンションの幅が広がります。
新築よりも費用が安い
同じ条件で新築を購入する場合の総費用と、中古を買ってリノベーションする費用を比べると、中古物件をリノベーションするほうが20~30%ほど割安になります。
また、新築の戸建てやマンションの価格は、新築後15年の間に大きく値下がりし、その後は経済状況に応じて緩やかに変動する傾向があります。そのため、築20年以上の戸建てやマンションを買うことで、購入から数年のうちに市場価格が大幅に下落するリスクを回避できます。
リノベーションのデメリット
リノベーションには、以下のようなデメリットがあります。メリットばかりに注目するのではなく、デメリットも理解してリノベーションに取り組みましょう。
耐久性に問題がある
中古の戸建てやマンションは、築年に注意して購入しましょう。なぜなら、建築基準法の改正により耐震基準が厳しくなっているため、古い物件が現在の法律に適合していない可能性があるからです。
このような状況では、最新の耐震基準を満たすために追加の対策が求められ、多くの費用がかかることも考えられます。
入居までに時間がかかる
通常、中古の戸建てやマンションを購入する場合は、物件の引き渡しが済めばすぐ入居できます。しかし、リノベーションする場合は、購入してから建物の検査やデザイン、施工などの作業が加わります。
そのため、入居できるまでにかなりの時間がかかります。
ローン金利が上がる可能性
中古戸建てやマンションを購入してリノベーションする際に、ローンを組む場合は要注意です。リノベーションの費用には標準の住宅ローンが使用できないため、住宅ローン以外に新たにリフォームローンを組まなくてはならないからです。
リフォームローンの金利は、一般的な住宅ローンより高いケースが多いため、全体としてローン金利が高くなります。加えて、購入後に工事が始まるため、工事の間家賃の二重負担が発生する可能性もあるので、資金計画をしっかり立てることが重要です。
中古マンションのリノベーション
中古マンションのリノベーションは、物件選択のひとつの手段として人気があります。ただし、費用面などで多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点があるのも事実です。
ここでは、中古マンションをリノベーションするメリットと、デメリットを解消するための方法をご紹介します。
物件購入時の選択肢が増える
中古マンションをリノベーションするメリットのひとつは、物件購入時に選択肢が増えることです。新築マンションに固執して物件探しをしていると、希望エリア内で理想の物件が見つからないことがしばしばあります。
日々の買い物や通勤、子どもの通学などを考慮すると、やはり立地にはこだわりたいところです。一方、賃貸ではなく購入ならなおさら、間取りやデザイン性など物件の質も譲れないという方が多いのではないでしょうか。
中古マンションのリノベーションを視野に入れることで、希望エリア内で理想的な住まいを得やすくなるでしょう。
資産価値が下がりにくい
新築マンションは、築年数が経過するにつれて資産価値が低下しやすい傾向があります。一方、中古マンションはすでに築年数があるため、新築に比べて資産価値の低下が緩やかであり、立地が優れた物件なら、物件自体の価値が減少しても土地の価値を維持できます。
マンションの管理体制も資産価値に影響を与えますが、中古マンションの場合、管理体制がどの程度整っているか事前に確認できるので安心です。資産価値の減少が少ないため、子どもが独立したり両親との同居などに合わせて、住み替えを考えやすい点もメリットといえるでしょう。
思いどおりに設計できる
中古マンションは、現代のライフスタイルに合わない間取りが多いですが、リノベーションによって間取りや内装を一新できるのが大きな魅力です。
新築マンションの場合、自分の理想に合った間取りや内装に変更することは可能ですが、先述のとおり価格が上昇しているため、リノベーションを考える際に予算が限られがちです。
ただし、中古マンションを購入することで、物件の購入費用を新築よりも抑えられる分、リノベーション費用に回すことができ、広々としたリビングや収納スペースの増設、パントリーの設置など、自分好みの間取りを実現しやすくなります。
住宅の機能が向上する
リノベーションによって内装や間取りを改装するだけでなく、住宅の機能や性能を向上させることも可能です。断熱性能を向上し、換気システムを整備することで、夏は涼しく冬は暖かく過ごせるようになり、バリアフリー化を進めることで、長く快適で健康的な生活を送ることも可能です。
リノベーション費用を抑えたい場合は、特に家族が集まるリビングの断熱性能を強化したり、来客に泊まってもらう部屋をバリアフリーにするなど、今の自分や家族に必要な機能や性能を充実させられます。
リノベーションできない場所もある
マンションでは、ウィンドウフレームやバルコニー、玄関ドアなどは、共用部分に当たるため変更できません。さらに、専有部分であってもマンションごとのルールや構造により、改装が制限されることがあります。
また、水周りの改装にも制限がある場合があります。水周りは中古マンションのリフォームや改装で多くの要望がありますが、マンションの規約によっては、水周りの位置変更に制約があるかもしれません。
対面式キッチンにしたい、お風呂の場所を移したいという場合は、内覧時に不動産業者やマンション管理者に、可能かどうか確認しておきましょう。
また、フローリングへの改装ができない場合もあるので、注意が必要です。畳やカーペットから、フローリングに変更したいという希望は多いのですが、マンションによってはフローリングが禁止されている場合もあります。
中古マンションのリノベーション費用を抑える方法
リノベーション費用をできるだけ抑えたい方のために、中古マンションの改装費用を削減する方法をご紹介します。
リノベーション費用を含めた住宅ローンを組む
リノベーションする場合に、一括で費用を用意するのは大きな負担となります。そのため、リノベーション費用を含めて借り入れできる、一体型の住宅ローンが推奨されます。
リノベーションだけのローンは、借入期間が短いため、月々の返済額が増える可能性があるので注意が必要です。一方、リフォーム一体型の住宅ローンを利用すれば、改装費用の借り入れも住宅ローンと同じ金利・借入期間になります。
費用をかけるべき部分とかけない部分のメリハリをつける
リノベーションの費用を低く抑えたい場合は、メリハリをつけた改装をするのがおすすめです。本当に必要な箇所やこだわりたい要素、目に付く部分に絞って改装すれば、その分費用を圧縮できます。
しかし、改装箇所を限定すると、あとでその部分を再度改装したくなることが多く、工事を分けることで余計な費用が発生する場合もあるため、注意しなければなりません。
中古マンションのリノベーション向きの物件を探す
満足のいくリノベーションを実現するためには、改修に適した物件の選定が重要です。とくに中古マンションの場合は、共有部分があることと、構造的な問題から、戸建てよりもリノベーションに制約が生じる可能性があります。
事前にマンションの規約を確認する
物件を探す際には、購入する前に管理規約を見せてもらい、希望のリノベーションが可能か確認することが大切です。リノベーションが可能であっても、使用する素材や性能、施工業者が指定される場合があるため、その点も確認しておきましょう。
さらに、実際にリノベーションするには、工事の内容や期間を事前に管理組合に申請し、許可を得る必要があります。
内見の際にリノベーション可能部分をチェックする
中古マンションの内見時に、どれほどのリノベーションが実施可能か確認しましょう。リノベーションの可否や具体的な工事方法、期間、予算などは、物件の元の状態や構造によって異なる場合があります。
こうした点は、仲介業者やリノベーション会社の専門家と一緒に、物件を見て話し合わないと分からないこともあるので、内見時に確認しておきましょう。
マンションの管理状況を確認する
リノベーションに適した中古マンションを探す際は計画的に大規模修繕が実施されているか、修繕積立金の残高が充分かという管理状況も確認する必要があります。
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕は12〜15年ごとに行い、その際に外壁塗装や防水処理を施すことが推奨されています。さらに、修繕積立金の残高は、台風による損傷やエレベーターの故障などの、トラブルに備えるために必要です。
管理状況が整っていれば、理想的なリノベーションを施したマンションに長期的に快適に住めるでしょう。管理状況は、共用設備の利用方法や清掃の状態からも確認できるので、内見時に意識してチェックしてみてください。
マンションリノベーションの経験が豊富な不動産会社に相談する
中古マンション探しは、リノベーションの実績が多い不動産会社に相談するのがおすすめです。多くの中古マンションを扱っているため、物件探しだけでなく、リノベーションに関しても相談できるので安心です。
断熱工事などの専門技術が求められる工事が得意な会社やデザインに強い会社など、各業社の得意分野を見極めて選びましょう。
中古マンションのリノベーション時のポイント
中古マンションを改装する際は、配管などの隠れた部分もチェックし、変更できない要素も把握しておくことが大切です。なぜこの2点に留意する必要があるのか、何を具体的に確認すればよいのか、以下に詳しく説明します。
中古物件の場合、内装や間取りなど目に見える部分だけでなく、床下の配管のような見えない部分も劣化していることがあります。放置すると、のちのち水漏れが発生する可能性があるため、見えない部分もしっかりチェックしましょう。
ただし、配管には専有部分と共用部分があるので、リノベーション可能な範囲は限られています。場合によっては専有部分であっても、管理組合によって共用部分の配管と一緒に修繕されることもあるので、規約などを確認することをおすすめします。
変更できない部分も事前に調べておく
リノベーションを考慮して中古マンションを購入する場合は、改装できない箇所とその理由を細かくチェックする必要があります。住環境や睡眠の質に影響を与えるため、注意深く確認しておきましょう。内見の前にチェックリストを作成しておくと、見落としを防ぐのに役立ちます。
リノベーション済の物件を購入する
時間や労力をかけたくない場合は、すでにリノベーションが施された中古マンションを購入するのも、ひとつの方法です。コストや立地といった中古マンションのメリットを享受しながら、リノベーションに時間や労力を費やさずに、理想の住まいを手に入れられます。
専門知識がない限り、中古マンションのリノベーション後の姿を正確に感じ取るのは難しく、実際にリノベーションされた後に「思っていたのと違う」と感じることもあるでしょう。
しかし、リノベーション済みの中古マンションであれば、すでにリノベーションが完了しているため、どんな部屋に住むことになるのか、自分の目で確認してから選べます。このように、リノベーション済のマンションなら、納得のいく物件選びができるのです。
リノベーション費用を別途用意する必要がない
リノベーション済みの中古マンションの場合、必要なのは購入費用のみで、リノベーションのための費用はいりません。中古マンションを購入した後にリノベーションする場合は、リノベーション費用を残しつつ物件価格を決定する必要があり、予算の管理が複雑になります。
さらに、住宅ローンとリフォームローンを一緒に組むか、別々に組むかも考えなくてはなりません。しかし、リノベーション済みの中古マンションを選べば、購入価格にリノベーション費用が含まれているため、予算の管理や融資の計画のことで悩む必要がなくなります。
購入後すぐに入居できる
リノベーション済みの中古マンションのもうひとつの魅力は、購入後すぐに住み始められることです。中古マンションを購入してリノベーションする場合は、設計や施工に5~6か月程度かかるので、すぐに入居したい方にはとくにおすすめです。
まとめ
リノベーションには、新築では叶えられない自由な設計や費用の節約、物件選びの選択肢を広げるなど、多くのメリットがあります。一方で、耐震性の問題や入居までの時間、ローン金利の高さなど、デメリットも見逃せません。とくに中古マンションや戸建て物件を選ぶ際には、物件の管理状況やリノベーション可能な範囲などをしっかり確認することが重要です。リノベーションを成功させるためには、物件選びから計画までの段階を慎重に進めることがカギとなります。また、リノベーション済み物件を選べば、時間や労力を節約しつつ、理想的な住まいをすぐに手に入れることができます。自身のライフスタイルや予算に合わせた選択をすることで、中古住宅でも快適で価値ある住まいを実現できるでしょう。リノベーションを検討している方は、物件選びや資金計画、施工業者の選定などを総合的に考えながら、自分たちに最適な住まいづくりを目指してください。